Column連載コラム

2022.06.20

予測モデルの予測精度も大事だが利益最大化も大事である

■はじめに

データサイエンスアカデミー兼任講師の笹森です。
今回は私が過去に行ってきたデータ分析業務の一端について語れる範囲で語りたいと思います。

 

■利益が上がるのか下がるのか、が一番知りたい

自分が所属している団体あるいは支援先の団体が営利団体がであるならば「利益」というのは大事な観点です。

「データからこういう傾向がある、こういう仮説が立つ、というのは分かりました。それで、結局どういうアクションをすればどのくらい利益が上がるのでしょうか?」

ということです。
データを分析してそこで終わってしまうと「今回の結果を踏まえて今後どのようにするべきか」まで辿り着けないことが多いです。
また往々にして「良い分析」が出来るときは、そのゴール地点まで踏まえて分析できていたときであったりします。
導きたい結論ありきで分析を進めすぎてしまうと作為的な操作を行ってしまうことにもなりかねませんので注意が必要ですが「こうなるだろう/こうなってほしい」という仮説が全くないまま、とりあえず分析するだけ分析してみるということも少ないです。

 

■利益を上げる要因は何か?

利益と述べても粗利益・営業利益・経常利益・当期純利益など様々な細分化がありますがここでは大雑把に「利益」とまとめてしまいましょう。利益とは「収入 – 支出」であるわけですから、利益を上げるためには売上を上げるか支出を下げればよいわけです。
売上を上げる/支出を下げると一言で述べてもこちらも様々な要因があります。

例えば私が過去に従事した案件の中でだけでも様々です。

・今後より売れそうな商品を特定したい(その商品にリソースを注力したい)→売上を上げる(見込みのない商品へのリソースを割かない、という意味ではコストカットの観点も併せ持ちます)
・顧客の休眠化/離脱化を防ぎたい(定期的に売上が立つようにしたい)→売上を上げる
・金額インパクトの見込みのなさそうな顧客に対しては最小限の広告リソースにしたい→支出を下げる
・機器が故障する前に予兆検知して部品交換をしたい(そうすると最小限のコストで済む)支出を下げる
・怪しい顧客を取引情報から検知してアラートを上げたい(見逃して、もし事故が起こるとその分コストがかかるのでそれを防ぎたい)→支出を下げる
・機会損失/在庫抱えリスクを減らすために適切な需要予測をしたい(売上も立てつつコストも減らしたい)→売上を上げる/支出を下げる
・無駄なく配送を実施したい(最適輸送の戦略を立てたい)→支出を下げる

 

■それによってどの程度利益が上がるのか?

データ分析は定量的に物事を語るものですから「利益が上がる」というのでは不十分であり「利益が〇円上がる(売上が〇円上がる、支出が〇円下がる)」まで示せるのならば示すべきでしょう。
例えば予測モデルを構築した場合、モデルの精度検証を行いますがそこで算出される精度というのは、あくまで「参考値」でしかないとも言えるでしょう。

例えば顧客の休眠化/離脱化の予測を行うモデルを構築したとしましょう。顧客が休眠/離脱すれば当然その顧客については売上が立たなくなります。顧客Aさんが過去5年間にわたり毎年10万円もの購買行動を起こしていてくれたとして来年以降に顧客Aさんが休眠/離脱してしまうと毎年10万円もの損失になってしまいます。
※これから先もずっと顧客Aさんが毎年10万円も使うとは限らないので非常に雑なシミュレーションです。ここの収益シミュレーションをより精緻にするために「休眠化/離脱化予測モデル」とは別に「顧客の将来的な売上予測モデル」を構築して併用する場合もあったりします。

休眠化/離脱化の予測モデルの精度が仮に100%であったとしましょう。まず予測モデルによって休眠化/離脱化する顧客を特定できます。
そしてその顧客が「もし休眠化/離脱化していなかったならばこの程度の購買金額であっただろう」を別途算出すれば「何も手を打たないままだと〇人の顧客が休眠化/離脱化していき〇円の損失になります」が出せます。

利益というのはやはり大事ですから「モデルの精度が〇%でした」だけでは終わらせずに「〇%の精度のモデルを使ってシミュレーションをすると〇円の利益が出ます」まで提示できれば、実際に受けは良いことが多いです。

 

■それを達成する/防止するためにはどうすればよいのか?

もちろん「〇円の利益が出ます」とだけ述べても絵に描いた餅ですので、それを達成するためにはどのようにすればよいのかが次に気になるところです。これを提示するためにはデータ分析で得られた知見が必要になります。基礎的な分析を行った結果であったり構築したモデルの中身を紐解くことによって得られた結果であったり、様々です。
よってこちらでもデータ分析して終わりとするのではなくそこから得られた結果を吟味・咀嚼していく必要があるのです。
また「こうすればよい」という提案をする際には現実的な提案でなければなりません。例えば「雨の日のほうが売り上げが上がる傾向がある」という結果が出たからと言って「日本の天気を毎日雨にしましょう」という提案をしても全く無意味であることは明らかですね。

 

■おわりに

今回は私が過去に行ってきたデータ分析業務の一端について語れる範囲で語りました。
やや粗い粒度で語ってしまいましたが、述べたかったこととしては「データ分析をして終わり」ということは少なく、むしろ分析した後こそが大事である、ということです。だからといって分析が適当でよい、簡単な分析程度でよい、ということではありません。
きちんと専門的な知識に基づいてデータ分析を行ったうえでそれを最大限利活用するように努力するべきというかと個人的には思っております。そして、だからこそデータサイエンティストという仕事は面白いと思っております。

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