Column連載コラム
2021.10.03
【データサイエンスと資格の話】その① データサイエンティストを目指すときに有利になる(かもしれない)資格
就職・転職支援担当スタッフの中川です。
立場柄、「データサイエンティストとして転職するために必要な資格を教えてほしい」というご相談をよくいただきます。今回は、主に就職や転職という観点から「データサイエンスと資格」についてコラムを書きたいと思います。
結論から言うと、「この資格を取れば必ずデータサイエンティストになれる」という資格はありません。医師や税理士のように、資格を所有している者のみが業務を行うことができる(業務独占)というわけではありませんし、介護福祉士や栄養士のように、資格を所有している者のみがその職業の名称を名乗れる(名称独占)というわけでもありません。
かなり新しい職種でまだ仕組みが確立していないこともありますが、データ分析の世界では資格の有無よりも実際のスキルが重要視されることは間違いなく、ある意味では職人のような世界と言えるかもしれません。
しかし、一方で、未経験者がデータサイエンティストやデータ分析職を目指すときに「有利になる(かもしれない)資格」がないわけではないでもありません。ここからはそれらの資格をご紹介します。
前提として、転職・就職を目指して資格を取得するのであれば、相手(=採用する側の企業)がその資格に価値を感じていなければ意味がありません。様々な資格がありますが、その価値は一様ではないため、なるべく多くの企業が価値があるとみなしてくれる資格を目指すべきです。
資格には、大きくわけて国家資格と民間資格があります。一般的には、民間資格よりも国家資格の方が信頼度が高く、多くの企業が価値があると考える可能性が高いと言えます。
■データサイエンティストを目指すにあたり有用な国家資格
現在、データ分析に特化した国家資格は存在しません。しかし、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施しているIT技術者の入門的な資格である基本情報技術者試験、その次のステップとなる応用情報技術者試験は、データサイエンティストを目指すうえでも有用な資格になるでしょう。これらの資格は、IT企業において技術者の基礎力を示す資格として定着しており、データサイエンス系の企業でも入社後の取得を奨励するケースが多いです。まずは基本的なITの知識を習得していることの証明として、基本情報技術者試験の取得を目指すのは意義があると思います。
基本情報技術者よりも応用情報技術者の方が上位に位置付けられる資格ではありますが、基本情報技術者試験にはプログラミングが出題されるため、これまでプログラミングと無縁だった方の中には、応用技術者試験の方がとっつきやすいという方もいらっしゃいます。試験で避けることができたとしても、データサイエンティストを目指そうと思ったときにプログラミングを避けることはほとんど不可能ですので、基本情報技術者試験のプログラミングにもぜひ取り組んでいただきたいです。ちなみに、データに関連する資格としては、応用情報技術者のさらに上にデータベーススペシャリストという資格もあります。
IPA 情報処理技術者試験
https://www.jitec.ipa.go.jp/
■データサイエンティストを目指すにあたり有用な民間資格
民間資格については、昨今様々な団体や会社がデータ分析やAI、統計に関する独自の資格を設立し、乱立状態です。正直なところ玉石混交で、質も評価も定まっていないものが多いです。これから勉強を始めようという方は、どれを取得すればよいか迷うかもしれません。迷ったときには、中立の立場にある団体が実施していて、なるべく歴史が長く、問題の質が担保されている資格を選ぶべきだと思います。
その点で評価が高いのは、一般財団法人統計質保証推進協会が実施している統計検定です。歴史は10年ほどですが、他の資格に比べると長く、問題の質も安定しています。就職・転職の際に評価対象になりうるのは2級以上で、データ分析系職種の募集要項に歓迎要件として記載されていることも多いです。統計検定2級の出題レベルは「大学基礎課程(1・2年次学部共通)で習得すべきこと」で、統計学の基礎部分にあたる内容ですが、本格的に統計学を学ぶのが初めての方は、それなりに勉強が必要だと思います(データサイエンスアカデミーのカリキュラムにある「統計学」も概ねこのレベルです)。CBT(テストセンターでコンピュータを使用して受験する形式)でいつでも受けることができ受験のハードルも低いため、まずは統計検定2級の取得を目指すことをお薦めします。
統計検定
https://www.toukei-kentei.jp/
■ユーザー側の資格と技術者側の資格
データ分析に限らず、IT系の資格には「ユーザー側の資格」と「技術者側の資格」があります。「ユーザー側の資格」は、IT技術を提供される側が正しい判断ができるようになるための資格で、「技術者側の資格」は、IT技術を提供する側の技術力や知識を判定するための資格です。データサイエンティストは技術を提供する側ですので、技術者としての力を示すためには、「技術者側の資格」を取得すべきです。
IPAが実施しているITパスポートやディープラーニング協会が実施しているG検定は、ユーザー側の資格になります。段階的に知識を身に付けるという意味においては有用ですが、データサイエンティストとしての就職・転職を目指す際の資格としては評価が低くなる可能性があるので、注意が必要です。
以上、データサイエンティストとして転職・就職するにあたって有用な資格についてのお話でした。資格を取得するにせよしないにせよ、勉強すること自体が素晴らしいことだと思います。資格取得の向こう側にある自分が目指す姿に向かって、ぜひ勉強を続けていただければと思います。